親父はテニスをしたいというボクに、
そのテニスクラブへの入会ではなく、
中学のテニス部に入るように勧める。
悪名高い『ブカツ』に不安を覚えるボクに、
親父はさらにそれに追い討ちをかけるかのように、
中学には、たぶん、テニスならぬ『軟式テニス』しかない、
と告げるのだった。
中学で『軟式テニス』をしておいて、
高校から本来のテニスである『硬式テニス』に転向すれば心配ない、
と諭す親父。
でももう、どっちにしても、中学のテニス部に入るしか道はないのだ。
他に、ボクが入れるようなテニスクラブは、近くには無い。
ところが、初めてその中学校に行った入学式の日、
そこにはテニスコートが無いことに気づき愕然としてしまう!
ということで、場面は、
第1話『テニスコートが無い!』に戻ったわけです。
テニスコートが無いことに愕然としていたボクが、
第2話、第3話と、それまでのいきさつを振り返っていたわけです。
さあ、果たして、テニスコートのない中学に、
テニス部はあるのだろうか?
それでは、『トップ1%プレイヤーへの道!』第4話、
『野球とサッカーは男のスポーツで、テニスは女のスポーツ?』
をどうぞ!
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ボクは、この中学にはテニスコートが無いってことに、
気づいてしまった。
ガックリと肩を落としながら、
グラウンドの方へトボトボと歩いていく。
グラウンドの方を見ると、
横の方の部室からサッカー部らしき生徒たちが次々と出てきている。
皆それぞれボールとたわむれている。
リフティングする者、ドリブルする者、
ゴールに向かってシュートする者・・・。
その中にひときわでかいヤツがいた。
グローブを持っているのでゴールキーパーだろう。
あれ?見覚えのある顔だ。
あれは、確か・・・
そう、ケンイチだ!
でも、あいつはボクと同じ新1年生。
もう入部して練習しているのか?
じーっと見ていると、
むこうもこっちが見ていることに気づいたみたいで、
ドリブルをやめてこっちの方をじーっと見た。
ボクだとわかったみたいだ。
右手を上げて大きく振るケンイチ。
「おーい!レイジ!」
大声を出したケンイチは、
ドリブルしながらこっちに向かってゆっくり走って来た。
「久しぶり!レイジ!」
すぐ近くまでくるとボールを止めて元気に挨拶するケンイチ。
近くで見るとますますでかい!
中学1年生になったばかりだというのに、
もう既に高校生の身長だ。
「よっ、久しぶり。
ケンイチは入学式の日から、もう部活かよ?」
「うん、実はもっと前の春休みから入ってんだよ。
レイジは今日からサッカー部に入るのか?」
「いや、今日はちょっと・・・。」
「レイジのことはもう先輩たちに話しておいたから。
レイジとタカシとオレと3人揃って即レギュラーだし、
特にレイジのことはキャプテンがすっごく期待してるぞ。
3人入ればいきなり全国狙えるんじゃないかってね。」
「そっか・・・。」
「で、いつから入る? サッカー部。」
「いや、まだ決めてないんだけどね・・・。」
実をいうと、ボクは、
小学校3年生からサッカークラブに入っていたのだ。
小学生だけのクラブなので、
当然小学校卒業と同時にチームを引退したのだが、
ケンイチとは同じクラブのチームメイトだった。
ケンイチは5年生になってから入ってきて、
背が高いからすぐゴールキーパー(GK)にさせられて、
6年生になってからレギュラーの正GKになった。
ボクは3年生になってすぐの時に、お袋に連れられて、
サッカークラブの練習を見に行ったのだ。
最初だからとりあえず見学だけに行ったんだけど、
監督がボールをこっちにゆっくり転がして、
「ほら、蹴ってみろよ。」って言われて、
思いっきり蹴ってみたら、
勢い良くボールが監督の足元に飛んでいった。
その時ボクは何とも言えない気持ち良さを覚えた。
ボールを蹴るだけなのに、
すごくスッキリした爽快感みたいなものを感じたことを、
今でもはっきりと覚えている。
そして、「サッカーやってみるか?」って聞かれて、
「うん!やる!」って元気に答えたことも、はっきり覚えている。
ボクが4年生になった時、新しいユニフォームができて、
全員に配られたんだけど、
6年生のレギュラーから配っていくので、ボクの背番号は40番だった。
その当時で、全部で60人以上いる大所帯だったからだけど、
結局最後卒業するまでずっとこの40番だった。
5年生になって、ボクはレギュラーに選ばれた。
3トップのフォワード(FW)の右で、いわゆる、右ウィング。
現代の戦術での右サイドバックや右サイドハーフのように、
右サイドを駆け上がってセンターリングする役目があって、
フォワードとしても積極的にゴールも狙う。
当時の古い戦術だから、今の戦術の3トップとは微妙に違うのだ。
その時ではもう70人以上いたと思う。
それでたったの1チームだ。
レギュラーになれるのはほんのひと握り。
5年生でなれるのはそのまたほんのひと握り。
6年生でもレギュラーになれず試合にも1度も出られない子もいた。
ひどい話だ。
ボクは幸運にも試合にはいつも出ていたけれど、
選ばれた自分を誇りに思う気持ちと同時に、
少し申し訳ないという気持ちもあって、
それをどうしても心から消し去ることができなかった。
6年生の時は100人近くになっていた。
でも試合に出られるのは1チームのみだった。
その後何年かたって、学年別のチームになって、
さらに1学年1チームずつではなく、
みんなが試合に出られるように、
人数分にあわせたチーム数で試合を行うようになっているらしい。
それこそ、スポーツの正しいあり方だ。
みんなが同じように練習して、
みんなが同じように試合に出る。
「それより、ケンイチ。
この中学にはテニスコートは無いみたいだけど、
テニス部は無いのかなあ?
知ってるか?」
「ああ、知ってるよ。テニス部ならあるよ。
そこのバレーコートやバスケットコートにネット張って時々練習してる。」
「ふーん、そうなんだ。」
ボクは表情を変えずになにげなく答えたのだが、
実は内心嬉しくて小躍りしていた。
「でも、なんでレイジがそんなこと気にするんだ?
まさか、パンチラ目当てじゃないだろうな?」
「アホか!違うよ、オマエと一緒にするな!」
「冗談だよ!でも、まさか、
テニス部に入ろうなんてバカなこと考えてんじゃないだろうな!」
内心ギクッとしながらもまたまたボクは平静を保ちながら答える。
「いや、ちょっとテニスも面白そうだなって思ってね。」
「レイジ、テニスは女のスポーツだぜ。
男だったらサッカーか野球だろ。」
一瞬でカチンときた。
「おいおい、それはまずいぞ、オマエ。
テニスをバカにしてるし、女もバカにしてる!」
ボクはテニスはまだやっていないし、女でもない。
でも、これは問題発言だ。許されない類いの。
ボクの語気が急に荒くなったので、ケンイチの顔が一瞬引きつった。
ケンイチの言った『女のスポーツ』という言葉には、
テニスに対する侮蔑のニュアンスが感じ取れる。
そして当然のように女そのものをも侮蔑しているのだ。
自分のことや自分がやってるスポーツの良さを言いたいがために、
他人のことや他人がやってるスポーツをけなすようなやり方は、
ボクは特に嫌いだ。
自分の周りの他人の評価を意図的に下げて、
相対的に自分の評価を上げるやり方は、
卑劣で卑怯なやり方だ。
(第5話につづく)
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テニスコートは無くてもテニス部があることがわかって、
ほっと安心したレイジ。
でも、サッカーを続けたい気持ちもある。
サッカーもテニスも両方やりたいのが本音だ。
さあ、果たして、そんなことはできるのか?
次回『トップ1%プレイヤーへの道』第5話、
『なんで部活動は同時にいくつもやってはいけないんだ?(予定)』
を請うご期待ください!
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それでは、今日第4話のワンポイント・フィロソフィです。
フィロソフィ(philosophy)とは哲学のことです。
哲学とは、自分自身の経験などから得られた基本的な考え、
のことをいいます。
『 テニスは
他のスポーツに負けず劣らず
素晴らしいスポーツだ 』
『 テニスというスポーツは
肉体的にも精神的にもかなりの激しさを要求されるし
技術的にも戦術的戦略的にも奥が深く
遊戯としてだけでなく競技としての完成度も高い 』
テニスというスポーツは、
やったことが無い人から見ると、
実に簡単で楽ちんに見えるらしい。
運動の苦手な女の子がファッションの1つでやる遊び程度のスポーツ、
という認識を持った他のスポーツの指導者がいたりするので、
驚きを通り越して思わず笑ってしまうこともある。
ボクは、一度だけ、テニスに対する侮辱を繰り返す同級生を、
テニスコートに引きずり込んで、
テニスというスポーツの本当の厳しさ・怖さ・恐ろしさを、
たっぷりと味わわせてあげたことがある。
野球こそが最高の男のスポーツだと言い張るそいつには、
普段ボクがやってる練習を軽くさせただけだが、
あまりのきつさにコートにへたばってしばらく起き上がれず、
途中で足を引きずりながら無言で帰っていった。
ヤツはそれ以来テニスを侮辱するどころか、
ボクとは会っても目も合わせず負け犬のようにコソコソと逃げ回った。
昔の話だが、プロレス団体の道場には、
空手家や柔道家などの道場破りがよく来るらしくて、
そういう時に相手をする『番人』は、
必ず関節技で相手の骨を折るそうだ。
当然の報いだ。
もっと昔のサムライの時代だったら当然のように殺されるかもしれない。
でも、ボクの場合は、制裁を加えるつもりはまったくなく、
テニスの本当の楽しさを教えてあげるつもりだったのだが・・・。
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