ボクはアキラに3つの戦術を授けた。
戦術と言っても基本中の基本といえる戦術だ。
しかし、アキラにとっては、おそらく初めての戦術だ。
単なる技術の比べっこの試合は昨日で終わりだ。
今日からは頭を使った試合をするのだ。
「本当にこんなことで勝てるのか?
というか、こんなことでポイントが取れるのか?」
アキラはこの戦術の有効性などわかりはしない。
わかっていればとっくにやっている。
それに、そんな説明などしている暇はない。
「いいか、アキラ!
オマエは自分が出来ることに集中するんだ!
とにかくオマエは言われたことをミスしないでやるだけだ!」
「わかったよ、やるよ。」
少々強引だが時間がない。
納得させている時間など無い。
とにかく、戦術練習だ。
頭ではわかっていても体がその通りに動かなければ何の意味も無い。
ネットを挟んで戦術練習を繰り返す。
練習が必要な戦術は3つのうちの2つだ。
最初は全くうまくいかなかったが、
徐々に様になってきた。
時間がないからこの程度の完成度でも仕方が無い。
あとは本番でうまくできるかどうかだ。
しかし、たとえうまくいったとしても、
テニスの勝ち負けは相対的なものだから、
勝てるとは限らない。
テニスで勝つには総合力を高めるしかない。
技術をベースに戦術と戦略、そして、メンタルとフィジカル。
この5要素の能力とその時のそれぞれのコンディション。
約束の時間近くになってタクヤがやってきた。
同好会のメンバーのリョウとユミも一緒だ。
メンバーが集まったので、同好会のみんなでの練習が始まった。
しばらくして、休憩になった。
そして、このあとの決闘の時間が迫ってきた。
アキラは緊張していた。
手が震えていた。
だが、必死で集中しようとしていた。
アキラにとってはどうしても負けられない一戦のようだ。
ボクはアキラの目を見てもう一度言い聞かせるように言った。
「いいか、アキラ!
オマエは自分が出来ることに集中するんだ!
とにかくオマエは言われたことをミスしないでやるだけだ!」
アキラはボクの目をにらみ返してうなずいた。
決意は固ったようだった。
一方タクヤはというと、余裕だった。
負けるはずのない相手である。
調子も悪くはない。
いつものように試合して、いつものように勝つだけだ。
試合が始まった。
(つづく)
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